第17回 冬の抗がん剤治療と副作用対策

抗がん剤治療の副作用というと、吐き気やだるさ、脱毛などが有名ですが、実はそれ以外にも様々な副作用があります。そうした副作用が悪化、増加しやすいのが、実は冬なのです。

冬と言えば、風邪、インフルエンザ、胃腸炎などの感染症で体調を崩す人が増える時季。がん患者にとっても危険なシーズンです。抗がん剤治療を受けている患者は、薬剤の影響で白血球が低減し免疫力が下がっている人も多いです。その状態で病院に通わなくてはならないので、感染症に罹りやすく、かつ重症化しやすいのです。

病院では、感染症対策が徹底されています。入り口に足踏み式アルコール消毒薬が設置され、通院する患者さんやご家族、見舞い客に消毒を徹底するよう依頼しています。看護師さんの朝礼時は、消毒状況を指差し確認したうえで患者の受け入れが開始されます。トイレや診療処置室には、手洗いの順序、洗うべき箇所と必要時間をポスターが掲示されます。マスクを着用した医療スタッフが増え、購買部や自動販売機でマスクを購入する方が増えます。

がん患者のための化学療法エリアにも、様々な配慮と工夫がされています。私が利用する大学病院の化学療法室は、他の診療科と離れたスペースに設置されています。化学療法室内に専用の手洗い、トイレも確保されていますので、他の病気の患者さんや家族と同じ空間を利用しなくて済みます。以前、化学療法のために通っていたクリニックでは、診察や点滴のスペースは化学療法を受ける患者もそれ以外の患者も一緒でしたが、トイレに関しては「化学療法受診の患者さん専用」と張り紙をして対応していました。

感染症のほかにも、がん患者が特に冬季に注意を要する副作用があります。代表的なものは皮膚の異常で、「手足症候群」という名前で知られています。手のひら、足の裏全体が赤く腫れたり、皮がすり切れたりするものです。私は過去、ゼローダ®(一般名:カペシタビン)を初めて投与された頃、薬剤量が多かったためか、手足の皮がすりむけてしまい、手指の指紋が確認できなくなってしまいました。その状態でアメリカ出張に行った2011年、指紋認証できないために、普通の入国審査場で通過できず、別室に呼ばれて尋問に応える必要がありました。

手足症候群は、細胞傷害性抗がん剤のほか、新しいタイプの抗がん剤である分子標的薬(特にキナーゼ阻害薬)でも発生します(※)。私の経験では、体重の負荷がかかるところだけが赤くなったり、硬化したりしました。人によっては皮膚がただれて潰瘍へと進展してしまう場合もあるようです。

日頃から、家事の際に手袋をしたり、気づいたときに保湿剤を塗布したりして対応することが大切です。医療機関でも、皮膚の保湿用のクリームなどを処方してくれます。

また、私が現在投与を受けている分子標的薬の抗VEGF抗体薬アバスチン(一般名:ベバシズマブ)にも、冬に注意が必要な副作用があります。それは、血圧の上昇と出血です。添付文書によれば、2割弱の患者にこれらの副作用が生じるそうです。

この薬剤を投与される患者は、自宅で血圧計を用意し朝夕測定するように指示されます。私は元々血圧が低いですが、定期的に血圧測定をして問題がないことを確認しています。一方、出血に関しては随分悩まされています。気温と湿度が低いなか、買い物や通勤等で身体を動かしたあとは、毛細血管が切れやすくなります。特に鼻の奥の血管が切れることが多いため、外出前、乗り物での移動時、オフィスワーク中、就寝時には、鼻奥に保湿のためのオイルを塗ってマスクも着け、出血の予防に努めています。

治療への意欲を高めるためにも、冬の季節を快適に乗り切りたいものですね。

※ゼローダ®のほか、次のような薬剤で手足症候群が多く報告されています。

  • 5-FU(一般名:フルオロウラシル)
  • ドキシル(一般名:ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)
  • タキソテール(一般名:ドセタキセル)
  • ティーエスワン(一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)
  • ユーエフティ(一般名:テガフール・ウラシル配合剤)
  • ネクサバール(一般名:ソラフェニブ)
  • スーテント(一般名:スニチニブ)
  • インライタ(一般名:アキシチニブ)
  • スチバーガ(一般名:レゴラフェニブ)

参考資料

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