第48回 がんの新薬の治験をすすめられました

かかりつけの大学病院から、挑戦してみる価値のある治験(ちけん)がある、と紹介を受けました。昨秋がんゲノム解析を行った結果、私には、ある遺伝子変異が発見されました。その変異遺伝子をターゲットとする治療薬の治験です。主治医とメリット、デメリットを話し合い、納得できたので、治験を行っている病院を紹介してもらうことにしました。

みなさん、またはお知り合いで、がん治療の治験に参加された方はいらっしゃいますか?「治験」という言葉を初めて聞いた、という方も少なくないかもしれません。

「治験」は、新しい医薬品や医療機器を開発する上で必要な研究のひとつです。病気の治療や検査に用いる新しい製品が世に出て病院などで広く使われるようになるためには、副作用や効果に関するデータを国に提出して審査を受け、厚生労働大臣に承認される必要があります。承認に必要なデータを得るために、病気の人(場合によっては健康な人)にその製品を試してみて、期待した効果が得られるか、予想外の重い副作用が出ないかを調べる研究(臨床試験)が治験です。

国によっては、治験の情報を誰もが簡単にインターネットで検索できるようです。日本にも、治験の情報を紹介するウェブサイトはありますが、使いやすいとは言えず、医療従事者でも治験情報は簡単に入手できないようです。治験について知らない患者が多いのも仕方ありません。

医療業界での勤務経験が長い私も、治験を推進する部門で働いたことはありません。普通の社会人よりも治験に関して見聞きする機会は多いほうですが、治験に参加された患者さんに直接お話を聞いたことがなく(*)、具体的にどのように治験が進むのかイメージがわきませんでした。

今回の治験は、薬の副作用について調べることを目的としていて、第一相試験と呼ばれます。通常の薬では、健康な成人に薬を投与して調査を行いますが、抗がん剤は強い副作用が出る場合があるので、すでにがんのある患者で治験を行います。

治験が実施されている医療機関は限られています。今回紹介された医療機関は、幸い自宅からそれほど遠くなく、通院は可能でした。一方、治験の内容はもとより、初めて受診する病院で見ず知らずの医師と付き合っていかなくてはならないので、心配はあります。実際、紹介状を持参して初診をした際は、予約時間よりも診察が遅れて4時間以上待たされたので、疲労と不安で、今後も続けられるのだろうかと憂鬱になりました。

もっとも気になるのは、治験薬の副作用です。今回の治験薬については、似たような抗がん剤(同じ変異遺伝子をターゲットとする分子標的薬)が日本国内で使われています。その似た薬では、これまでのところ頻発する副作用は限られていて多くは穏やかなので、対処はしやすいということでした。こうした情報から、今回の治験薬の副作用についてもある程度の予測ができると説明を受けました。

治験に参加する方向で、参加条件を満たしているかを確認する検査を進めています。あらためて感じるのが、治療を行う体力、健康度、気力が残っている段階でないと、治験にも参加できないということです。通いなれない医療機関に何度も足を運び、長い待ち時間もいとわず、たくさんの検査を受け、総合的に問題がないと判断されて、初めて新薬候補の投薬が始まるのです。私自身も末期がん患者ですが、これ以上病状が悪化したら、治験にたどり着くのは至難の業だと感じながら、総合判定を待っています。

*実際に治験に参加した患者さんの体験談を視聴できるウェブサイトもあります。

健康と病いの語り(認定NPO法人ディペックス・ジャパン)
http://www.dipex-j.org/

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