第45回 がんで死ぬことは不幸でしょうか?

とある医療系ウェブサイトに、興味深いコラムがありました。企業の健康教育の研修で、産業医である著者が参加者にこんな質問をしました。

「あなたの寿命が尽きかけています。誠実に生きてきたあなたに、せめて死因を選ばせてあげましょう。がん、脳卒中、心臓発作のうち、どれを選びますか?」

著者はさまざまな企業で研修を行っているそうですが、もっとも不人気なのはがんなのだそうです。その理由として、がんには長く苦しむイメージがついてまわり、人はそれを恐れるのであろうと書いてありました。また、がん、脳卒中、心臓発作それぞれの病気や治療の実態を受講者が誤解していることも、判断の違いにつながっていると書かれていました。

このコラムの著者も強調していましたが、がん、脳卒中、心臓発作のうちでも、がんは痛みや苦痛を和らげて終末期を良好に保つ方法が発達している病気です。さらに、がんは最後まで意識が保たれるので、残された時間を使って、自分や家族で終わりの時を設計することができます。

これに対して、他の二つの病気は、かかった瞬間に死に至るケースは減ってきていますが、後遺症が残る場合も稀ではありません。病気にかかったことで、以前はできていたことができなくなり、後遺症のケアを必要とする人が増えています。

がんは告知されたときのショックが大きいですが、対応方法、治療の選択肢、人生プランなどが整ってきています。いかに早く冷静になり、自分の人生を設計しなおすかが大事です。

近年は、教育現場でがんに関する認知を高める教育が開始されました。現代の子供たちが大人になる頃に、どのような病気が日本人の死因の上位を占めているのかわかりません。ですが、少なくともがんについては、子供の頃から病気について学んでいることで、告知を受けても素早く立ち直り、人生設計ができるようになっているでしょう。

がん教育を受けられなかった大人世代も、病気になる前から積極的にがんに関する情報を収集すべきです。がんを遠ざける正しい生活、検診でがんを早期にみつける必要性、がんになったときの対処法などを学ぶことで、より良く行動できると思います。

がんと13年も付き合ってきた私にとっては、この病気は慢性疾患のように感じられます。人間も生き物ですから、いつかは亡くなります。それは仕方がありません。しかし、がんは、体も心も病気になる前と大差なく活躍できる期間が長い病気だと感じています。

生涯のうちにがんにかかる日本人の割合は、今の男性では62%、女性では46%です。そして、がんで亡くなる日本人は、男性で25%、女性で16%となっています。自分がかかるかもしれない病気の正しい知識を冷静な心のうちに取り入れて、日々の生き方、人生のしまい方、その両方を考えるきっかけにしてみてください。

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