第42回 根拠に基づく治療、EBMとは

11月29日付けの日本経済新聞に、国立がん研究センターの発表が掲載されていました。2013年にがんと診断された患者が、学会の診療ガイドラインで推奨される標準的ながん治療を受けた割合は72%で、前回調査よりも4ポイント上昇したという内容でした。国の進める「がん対策基本法」や各学会の診療ガイドラインが浸透し、標準治療を受ける機会が充実してきたといえるでしょう。

ところで、EBMという言葉を聞いたことがありますか?Evidence based medicineの略で、日本語では「根拠に基づく医療」と訳されるようです。医師が経験を通じて身につけた知識や技術に、医学研究から得られた客観的証拠を組み合わせて、個々の患者にもっともふさわしい医療を行おうという取り組みを指します。EBMは、がんの標準治療の根底を支える概念だと考えます。

EBMで重視されるのは、抗がん剤の奏効率(治療を受けた人の何割に効果があるか)だけではありません。患者ひとりひとりの年齢、これまでにかかった病気、体力、生活スタイルなども、判断材料になります。同じ標準的な治療であっても、患者によってどの程度の効果を示すかは違ってきます。

医師たちは患者と接しながら、臨床経験を生かして、この患者に標準的な治療を行うか、少し違う方法を取り入れるかを判断するものです。例えば、薬の量を加減したり、補助的な薬剤を追加したりといった工夫を、患者の病状や要望に合わせて提案します。

そして、医師それぞれの治療経験が集約され、定期的に学会などで発表されることで、また標準治療が変わっていきます。これが医学の進歩だと感じています。

患者のなかには、すでに標準治療が存在しないから、とか、標準治療にプラスして、という考え方で標準治療ではない治療、多くは自由診療となる治療を受ける方がいると思います。私自身も、標準治療と自由診療のがん免疫療法の両方を取り入れて治療を続けています。

両方の治療を受けている私は、自由診療はEBMが徹底できていないところに怖さがあると感じることがあります。標準治療であれば、治療をして効果があった人、効果がなかった人のデータは報告されています。しかし、自由診療の多くでは、効果があった事例を聞くことはあっても、効果がなく逝去された事例についてデータに基づいてきちんと説明されることは少ないです。

その治療法には自分が受けるにふさわしい根拠があるのか。自分は納得のいく説明を受けたうえで治療を選択しているのか。命を賭して治療を受けるに際して、冷静に考えてほしいと思います。

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