第39回 今日の小さな達成感を日記で残そう
皆さんは、日記をつけていらっしゃいますか。
私は、社会人になったときから、仕事用の手帳にプライベートの日記帳を添えて使うようになりました。今は、公私を分けたダイアリーを使っています。
最近の日記帳は、著名人が考案、編集したオリジナルスタイルのものが増えています。そろそろ年の瀬ですので、本屋や文房具店で来年向けの日記帳が並び始めました。今まで日記を書いていなかった方も、気に入ったものを購入して、新たな習慣にしてみてはいかがでしょうか。
何かのコラムで、職場での興味深い取り組みが紹介されていました。その職場では、勤務するすべての人にノートを1冊用意してもらいます。ノートのタイトルは「OKノート」。業務を終えたときに、一日ひとつ、自分の行動や言動を思い出して、それを褒めることを書くのだそうです。ただし、一度書いたことはもう書いてはいけないというルールがあります。

この「OKノート」が導入されたきっかけは、新卒で入職した若いスタッフが、日に日に顔をこわばらせ、おどおどするようになったことだったそうです。真面目でていねいな仕事ぶりのそのスタッフを観察してみると、注意されることに慣れておらず、何かをミスしたときに必要以上に気にしていました。魅力的だった笑顔が、次第に不安な顔つきに変わっていったそうです。
老若男女問わず、完璧な毎日を送れないのが人生です。ましてや、社会人経験も浅い若いスタッフ。ですが、自分の良いところを認められないようでは、他人の良いところも認められないものです。それを改善するためにOKノートは取り入れられました。
スタッフがOKノートに書くことは、同じことが書けないので、だんだんと「今日は歯磨きをした」とか「顔を洗った」とか、ごく当たり前のことになっていくそうです。とても面白いと思いました。
同じことががん患者にも言えると思いませんか。がんという病にかかると、思うようにいかないことばかりに目が行きがちです。今まで完璧に家事をこなしていたお母さん、部下にも上司にも信頼を置かれていたビジネスパーソン、こういった方ががんを患うと、今までできたことがなぜできなくなってしまったのだろうと、ひどく落ち込むものです。
しかし、病気になっても、今日はこれを成し遂げたということがあるはずです。自分を認め、褒める言葉を日記に残すことで、明日も頑張ろうと思えるのではないでしょうか。実際、がんと上手に付き合っている患者さんが、「今日はこんなことができたよ」と嬉しそうに看護師さんに話していらっしゃる声を聴くことがあります。
私が使っている日記帳には、「1行日記」のページがあります。私はそのページに、今日、自分が成し遂げたことを書くことにしています。今日はこんなことができたと自分を認めて褒めて、そのエネルギーで明日もまた何か1つ成し遂げよう。どんな病状であっても、そういう気持ちを忘れたくないと思っています。
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