第38回 がん教育は小学生から大人まで

涼しいを通り越してにわかに寒くなり、冬物のコートを引っ張り出しました。冬は、免疫力が下がりやすく、抗がん剤の副作用も出やすいので、がん患者にとっては手強い季節です。冬をできるだけ快適に過ごすためのヒントを第17回でお話ししていますので、どうぞご覧ください。

前の冬になりますが、教育委員会が主催するがんのシンポジウムに参加してきた、と知人のMさんが話してくれました。病院や医師会が主催するシンポジウムは多いですが、なぜ教育委員会?

実は、国のがん対策推進基本計画(平成24~28年度)の中に、がんの教育・普及啓発という項目があって、「子どもに対するがん教育のあり方を検討し、健康教育の中でがん教育を推進する」という目標がかかげられているのです。

学校の先生方は教育のプロではありますが医療のプロではないので、学校だけでこの目標をクリアすることは難しいです。そこで、教育現場と医療現場とが協力しあって、子どもの発達段階に合った教育のしかたを模索しています。

Mさんには小学生のお子さんがいます。お子さんが学校から持ち帰ったチラシを見て、Mさんはシンポジウムが開かれることを知ったそうです。以下、Mさんから聞いたシンポジウムの内容です。

シンポジウムのタイトルは、「『がん教育』について考える」。一人目の講師は、都立駒込病院の鳶巣賢一院長でした。鳶巣先生は、実際に近隣の小学校を回って講演をなさっています。検診を受けようとかタバコはやめようとか、そんな話を予想していったら、見事に裏切られました。

体も心も元気が一番ですが、人は老い続け、ときには病気にもなります。がんは色々なものを奪っていきますが、がんは自分が生まれ変わるきっかけにもなります。

がんにかかっても、自分で自分の人生を選び、堂々と生きること。その日に備えて、生きていく上でもっとも大切なものは何かを考えること。医学的な知識を教えるよりも、心のあり様に重きをおいて、子どもたちには話をしていらっしゃるそうです。

二人目の講師は、読売新聞の本田麻由美記者でした。乳がんサバイバーである本田氏は、ご自身の病気をきっかけに、がんと医療に関する発信を続けています。国のがん対策推進協議会の委員として、がん教育にも関わっていらっしゃいます。このときは、NPO法人がんサポートかごしまの「いのちの授業」をご紹介くださいました。

「いのちの授業」は2010年から続く活動です。がん患者さんが学校に直接出向いて、子どもたち(あるいは先生)に向けて、がんの体験から気付いたことを語ります。生身の患者さんに初めて会う子どもも多く、生きることと死ぬことについて考える貴重な場になっているようです。

すべてのいのちに関心を払い、大切に生かすこと。「がん教育」は、すなわち「いのちの教育」なのだと学んだ2時間だったと、Mさんは話していました。

とても良い取り組みなのに、シンポジウムの参加者は少なかったそうです。学校でこのような授業が行われていることも知らなかったとMさんは言いました。病気にかかってからではなく、かかる前からの「がん教育」が定着するには、もうしばらく時間が要りそうです。

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