第32回 転移がんへの治療 免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(オプジーボ®)の投与【1】

がん患者の多くの方が、そのステージやがん種に関わらず、免疫チェックポイント阻害薬について聞いたことがあるのではないでしょうか。免疫チェックポイント阻害療法については、以下のウェブサイトに掲載されている冊子に詳しく書かれています。
http://www.cancernet.jp/18350

今回私は、乳がんの転移病変への治療にニボルマブ(オプジーボ®)という免疫チェックポイント阻害薬を使ってみることにしました。第27回第28回第29回第30回で紹介した転移がんへの治療の続きです。

ニボルマブは、悪性黒色腫(メラノーマ)、一部の肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がんに対する治療薬として承認されていますが、乳がんに対しては治療効果や副作用がまだ確認されていません。確立されていない、研究段階にある免疫療法です。

この治療に伴い、免疫が過剰に活性化されて、未知のものを含むさまざまな副作用がでる危険性があることについて、口頭と文章で説明を受けました。副作用のリスクの観点から、自己免疫疾患や間質性肺炎がないこと、妊娠・授乳をしていないことなどが、治療を受ける条件となることも聞きました。

こうした事前説明を受け、日本臨床腫瘍学会が出しているお知らせ「免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ(オプジーボ®)、イピリムマブ(ヤーボイ®))などの治療を受ける患者さんへ」も読んだうえで、私は自分自身の意思でこの治療を選択しました。なお、本治療は自由診療のため、全額自己負担となります。

私は、2014年から樹状細胞ワクチン療法を取り入れています。(樹状細胞ワクチン療法の一連の流れについては、第11回をご覧ください。)樹状細胞ワクチン療法は、「司令官」である樹状細胞が、がんと闘う「兵隊」であるT細胞を活性化させて、がんを攻撃する治療法です。ところが、T細胞に攻撃されたがん細胞は、T細胞の攻撃を逃れるために、T細胞の働きを抑えるような信号を流してT細胞にブレーキをかけてしまいます。

免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(オプジーボ®)は、T細胞にかかってしまった攻撃のブレーキを解除してくれる薬剤です。私が樹状細胞ワクチン療法を最後に受けたのは2017年4月です。樹状細胞ワクチン療法でがん細胞を攻撃するT細胞を活性化するとともに、引き出された免疫力ががん細胞によって抑えられないようにチェックポイント阻害薬を併用するという治療戦略は、理にかなっていると思いました。

免疫チェックポイント阻害薬の投与中または投与後にがん免疫療法を行った患者で重い副作用が出たケースが2016年の時点で6例報告されています。このうち1例では、がん免疫療法との因果関係ははっきりしなかったものの、死亡に至るほどの深刻な副作用が起きたそうです。こうした副作用も、報告内容を確認すると、治療の一連の流れが把握されていなかったために起きたことが分かります。投与前に問題となるポイントを理解し、あらかじめ予防策をとるようにしておけば、私の場合は副作用をある程度防げるだろうと考えました。

なによりも、いつまでも寛解しない自分に自信が持てないままでいるよりは、科学的、理論的に有望なこの治療法を試して今を打破したい気持ちが強いのです。

血液検査で免疫機能や甲状腺機能、肝機能などに問題がないことを確認して、2017年7月中旬に第1回目のニボルマブ(オプジーボ®)を投与する予定となっています。次回のおたよりでは、実際に治療を受けてみた様子や私の体感などを報告します。

※文中に出てくる治療法は有効性や安全性が確立されておらず、テラ株式会社として推奨するものではありません。
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