第28回 転移がんへの放射線治療

2017年4月から新しい治療に踏み出し、第27回で2種の免疫療法(樹状細胞ワクチン療法、活性化リンパ球療法)を同時に行ったことについて報告しました。今回はゴールデンウィーク明けに開始した放射線治療の様子をレポートします。

「がん放射線療法2010」のデータによると、日本のがん患者のうち32.3%の方が放射線治療を受けています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001sp25-att/2r9852000001spdf.pdf

米国の同様のデータ(2012年)で放射線治療を受けた患者が65%を示していることと比べると、日本では放射線治療を受ける人がまだ少ないと言えます。

乳がんと初めて診断され腫瘍を取り除く手術を受けた後に、私は担当医から放射線治療、ホルモン療法、抗がん剤治療(化学療法)のすべてを勧められました。治療の負担(所要時間、体の負担)を考慮して、その時はホルモン療法だけを選択しました。その後、転移性脳腫瘍に対してガンマナイフ治療という特殊な放射線治療を行ったことがありますが、首から下の部分への放射線治療は今回が初めてです。

かつては、過去に一度でも放射線治療を行っていたら二度目はない、と言われていたようです。ですが、放射線治療の技術が進歩し、必ずしもそうとは限らなくなっています。

放射線は、同じ箇所に何度も照射できないのが原則です。昔は、放射線をあてる場所を細かく設定することができなかったので、広い範囲に放射線を照射していました。現在の放射線治療の機器では、かなり細かく照射計画を立てることができ、10センチメートル四方にピンポイントで照射する治療が選択できました。がん治療は、抗がん剤などの新薬の開発のみならず、放射線治療の分野においても進化していることを実感しました。

再発時の治療だけでなく、がんによる痛みの治療にも放射線治療は使われています。過去に放射線治療を受けた方でも、以前の照射エリアとかぶらなければ様々な箇所に放射線治療は実施できるので、がん疼痛で悩んでいらっしゃる方は放射線科の医師に相談してみてはいかがでしょうか。

今回放射線を照射するところは、12年前にがんが初めてできた場所から10センチメートルほど離れた右鎖骨の周辺です。放射線をあてる位置を正確に決めるために、治療に先立ってCT画像を撮影します。

続いて、胸より上部に照射する場合は、プラスチックで顔型を取ります。この型は、医療現場では「シェル」と呼んでいるそうです。シェルには、呼吸をしたり唾を飲みこんだりした時に身体が動いてしまうのを制限することと、毎回同じ場所に放射線があてられるように照射位置の目印となることという2つの役割があります。シェルは網目状になっていますが、閉所恐怖症の患者では利用できないそうです。

シェルの作り方です。まず、熱を加えると柔らかくなる性質があるプラスチックの平板を、顔に載せます。人肌よりやや温かい状態の板を顔にかぶせて、顔の輪郭に沿って押さえると、頭頂部から鎖骨あたりまでをカバーするシェルが取れます。温度が下がりプラスチックが固まったら、シェルの完成です。

それから、コンピュータを使って放射線をあてる範囲や照射の方向といった治療計画を立てて、シェルに油性マーカーで照射位置の目印を入れます。自分の肌にもシェルと合わせる位置が油性マーカーで書き込まれます。特に顔面部には間違って放射線があたると障害が起こる部位が多いこともあって、照射に正確を期するための準備が慎重に進められます。

放射線治療には「リニアック」という装置を使います。照射する放射線の強さ(エネルギー値)は、治療するがんがどこにあるかで変わります。私の場合は、鎖骨より上部(頭寄り)で皮膚から浅い位置にある腫瘍に照射するので、放射線のエネルギー値は4メガボルトに決まりました。なお、エネルギー値がさらに高い6メガボルトや10メガボルトの照射は、深いところに放射線をあてる場合や、特別な位置で照射する場合に利用するそうです。

本稿を書いているタイミングで、照射予定回数の1/3が過ぎたところです。次回は実際の治療についてレポートします。

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