第27回 樹状細胞ワクチン療法と活性化リンパ球療法を同時に行う免疫療法
第26回の患者だよりで、新しい治療に踏み出しますと報告しました。これから数回に分けて、それぞれの治療法と私個人の体感をレポートします。
放射線治療に先立って、細胞を使ったがん免疫療法を行いました
2017年4月から数カ月かけて、免疫療法と放射線治療を前後しながら実施していきます。治療方針を決めるにあたり、それぞれの治療を担当する医師から、「免疫療法と放射線治療とは相性がよい」、「相乗効果がみられるとする学術論文も増えている」と聞きました。2人の医師から同じコメントが得られたので、どちらかの治療を切り札のように取っておくのではなく、両方を同時に進めようと決めました。
今回は、放射線治療を開始する前に行ったがん免疫療法についてご紹介します。樹状細胞ワクチン療法と活性化リンパ球療法を同じ日に実施しました。
樹状細胞ワクチンは、2014年に11本のワクチンが作製できて、これまでに9本を投与しています。9回の投与では、程度に差はありますが、発熱(通常は37℃台後半)とワクチンを注射した部分の皮膚の腫れ・赤みを経験しています。これは免疫反応が起きていることに伴う副作用です。慣れてくると、ワクチン投与後に日常生活にどの程度の支障がでるかわかるようになるため、うまいタイミングで休息を取れるのであれば、仕事をしながら治療を行うことも可能です。第11回と第12回で樹状細胞ワクチン療法の流れや私の体感を掲載しています。
活性化リンパ球療法については、発熱や皮膚の発赤は起こりません。私は投与後に頭が冴えたように感じたり、陽の光がまぶしく感じられたりします。ほかの患者さんからは、気持ちが明るく穏やかに感じられるとか、身体にエネルギーが満ちるような感覚を覚えるとか、そのような感想をよく聞きます。活性化リンパ球療法の仕組みについては、第20回もご覧ください。
樹状細胞ワクチン療法と活性化リンパ球療法を同時に行ってみて
樹状細胞ワクチン療法と活性化リンパ球療法を同時に行うのは、初めての体験です。また、今回は、転移がみつかった右鎖骨上窩リンパ節の周辺にも局所注射をすることとなりました。
樹状細胞ワクチンは、冷凍保存してあるワクチンを使いました。活性化リンパ球療法の方は、新たにリンパ球の培養を行いました。治療法の相談に訪れた2017年4月4日にリンパ球を採取するための採血もしており、ちょうど2週間で培養が完了し、2017年4月18日の投与となりました。一人ひとりの患者から採血して集めた免疫細胞を数週間(リンパ球では2週間、樹状細胞では3週間以上)培養してやっと患者に投与できるというスケジュールになるので、綿密に治療計画が立てられます。
活性化リンパ球療法の注射液は、液量が100ミリリットル程度あり、点滴で投与します。樹状細胞ワクチンは1本が数ミリリットルと少ないので、全量を右側の鎖骨の周辺に局所注射しました。
投与後はやはり発熱が起こりましたが、前回、樹状細胞ワクチンを投与したとき(2016年9月末)とは比べものにならないほどの高熱になりました。投与後12時間は平熱でしたが、12時間を過ぎた頃から熱が上がりだしました。24時間後までは熱は38.5℃よりも下がることはなく、39℃近くまで上がりました。発熱には慣れているので自然に任せていましたが、局所注射を行った右鎖骨のシコリ周辺の痛みは耐えがたいものでした。頻繁に冷やしたり、ペンレステープ®(貼るタイプの局所麻酔薬)を使ったりしてしのぎました。ワクチン投与から1週間でやっと平熱に落ち着き、右鎖骨あたりの痛みもさほど気にならなくなりました。
それから、約3週間が経ちました。腫瘍細胞に闘いを挑んでいるであろう私の免疫細胞を応援し、ワクチンの活躍を願っている現在です。
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