第14回 がん報道 メディアの功罪

みなさんは、どのようなメディアでがん情報に触れることが多いでしょうか。芸能人や著名人(いわゆるセレブ)の発信するブログや、セレブを取り上げる報道から情報を得る、という方も多いのではないでしょうか。こうした情報は、がん患者や家族にとっては知らなかった治療法を知るきっかけになり、それ以外の方にとってもがんという病気を知る大切な機会になりますが、情報の解釈には注意が必要です。

セレブのブログや彼ら、彼女らを取り上げた報道番組で紹介される治療法や病気の情報は、いつでも科学的に正しいわけではありません。また、すべての受け手に誤解を与えない内容になっているかというと、そうとも限りません。なぜなら、こうした情報は、個人の感想や体験談に重きを置き、科学的な考察は加えられない場合もあるからです。こうした情報の位置づけを理解した上で、情報を受け取る心構えが大事です。

乳がんの疑いで生検を受け、病理検査の結果(悪性か良性かの診断)を2週間後に控えて、こころの状態が不安定な友人が電話をしてきました。彼女はこう言いました。

「テレビで、乳がんにかかった女性タレントが、最初に診察を受けたときは大きさが2センチだったシコリが数ヵ月後の手術で取り出したときには2.5センチになっていたと話していたの。私も悪性と診断された場合は、腫瘍が大きくならないうちに、一刻も早く手術を受けるべきなのかしら?」

私は医療者ではないので専門的な回答はできませんが、自身がかつて主治医に言われたことを伝えました。

「確かに、がん細胞は通常の細胞よりも増殖のスピードが速いという特徴があるので、腫瘍の大きさが診断時と手術時で異なっていたと聞くことはあるわ。でも、私もCTで腫瘍の大きさが3センチと言われてから手術を2ヶ月以上待ったけれども、手術をした時の腫瘍のサイズはCTで特定したときと変わっていなかったわ。」

「腫瘍の大きさよりも大切なことは、がんの分類、がんの性質。それ次第で治療の方針も変わるの。他の臓器への影響がでないといわれる非浸潤がんなのか、転移の可能性も踏まえたほうがいい浸潤がんなのか。もっというと、浸潤がんでもその性質(腺がんや硬がんなど)によって治療法や予後は違う。がんとはどういうものなのか、全体像を把握できる情報を提供してくれる専門家と話をしないと、あなたは情報に振り回されて、不要なエネルギーを割き、今やるべきことを見誤ってしまうわ。」

こう説明して、「がん相談支援センター」を訪問するよう勧めました。がん相談支援センターは、がん診療連携拠点病院の中に設けられていて、その病院にかかっていない人でも無料で相談できます。漠然とした不安を聞いてもらうためだけに利用することも可能です。

セレブが発信しているブログやそれを取り上げた報道番組では、「個人の気持ち・話題性・ニュース性」が優先されます。科学的な情報の裏づけや信憑性の確認をした上で、常に情報提供をしているわけではありません。がんに関するニュースが大々的に取り上げられても、報道内容にそのまま流されるのではなく、情報の裏づけをする癖をつけましょう。お近くのがん相談支援センターや、国立がんセンターなどの信頼できるウェブサイトが、あなたの味方です。

※このウェブサイトの情報は著作権法により保護されており、複製、改変、転載等の行為を禁止します。

バックナンバー

著者プロフィール

テラのFacebookを見る

テラのFacebookを見る

ページトップへ