第13回 毎日続ける運動のススメ~一日の始まりを整え、終わりを安息に~

病気の予防または治療に、適度な運動が有益であることは知られています。今日は、自分自身と向き合い、一日一日を大切に過ごすための運動の取り入れ方をお話しします。あくまで筆者の体力に応じた体験であるため、体調、状況に応じてご自身で運動量をコントロールするようお願いします。

私はがんにかかってからも外資系企業に勤務しており、世界中の職場の仲間と電話会議をする機会がありました。時には日本時間の真夜中の時間帯に電話会議に参加しなくてはならず、生活リズムが数日間おかしくなることもありました。自分の身体の声に耳を傾けて毎日を大切に生活しなければと反省したのは、がんのステージが進んでからでした。そんな私が始めたことは二つだけです。

がんにかかって、まず始めたのはヨガ。

はじめは肩こりや腰痛を和らげる目的もあり、主にホットヨガ(気温45℃くらいで湿度の高い室内で行うヨガ)に通っていました。抗がん剤を開始した頃からは室温でのヨガをするようになりました。最近も、ほぼ毎朝5分ほどの座禅の後に30分のヨガをしています。

目覚めたばかりの体は脱水状態にあり、また、脳も活性化していないようです。起きたら、一杯の白湯を飲み、窓を開け、ヨガマットを敷きます。それから、座禅を組み、腹式呼吸で尾骨から背面を通って脳天まで息を吸い、吸い切ったら体前面を通って尾骨まで息を吐ききります。単純な動作ですが、自分の吸う息を腎臓に届け、肩甲骨の間を通し、脳全体に行き渡らせ、鎖骨の間にも酸素を送り、と、ひとつひとつの体の細部を意識すると、簡単にできないことがわかります。やっと満足いく呼吸ができる頃には、酸素豊富な頭で覚醒している自分がいます。

もうひとつは、万歩計の携行。

がんに罹患してからは特別な運動に時間を割くよりも、歩くことを大切にしています。通勤時は、荷物が少ない日は駅一つ分歩いています。外出する際も、長めの徒歩ルートを使ったり、少し遠い図書館に通ったりと、普段の生活の中で歩く場面を増やしました。

歩き始めると、膝が伸びていない、アキレス腱が活動していないなど、自分の体全部を満遍なく使えていないことが理解できます。自分の今の体調を1ケ所ずつ確認してゆくことで、自分の身体に異変がないか知ることができます。就寝1時間ほど前にゆっくり歩行して帰宅すると、心地よい疲れに誘われて熟睡しやすくなります。

ヨガも歩行も、その目的は自分の体の細部が満足に動いているかを確認しながら、自身の身体と対話することです。負荷の重くない運動ですが、一定の時間行うと頭は無の境地に辿り着き、身体は心地よい疲労を感じます。どちらも始めたばかりの頃は、無の境地に至るよりも、頭が冴えてしまい、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと考えてしまいました。最初はそれでもいいのです。脳も身体もデトックス=解毒できているはずですから。

がんにかかるということは、自分の命が尽きるまで病気そのものと伴走しなくてはいけないということです。今日も一日よろしくね、と朝が始まり、今日も一日無事に大切に生活できたね、と、自分自身をもう一人の自分が見つめる時間を持つ。それが運動する時間であり、私の一日の大切な区切りとなっています。

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