第6回 お見舞いの言葉

がん闘病中は友人知人にお見舞いの言葉をいただくことがあります。入院中は直接病床に出向いて声を掛けてくれたり、手紙やメールを寄せてくれたりする方もいます。普段の付き合いの深さに関係なく、気にかけてくれていることに感謝します。

自分が経験したことがない辛い状況に陥っている人にどんなお見舞いの言葉を掛ければよいのかわからない、という方も多いようで、「今までもらったお見舞いの言葉で勇気付けられたものはなんですか」と尋ねられることがあります。読者のみなさんの参考になればと思い、私の体験を書きます。

なんと声を掛けてよいか分からず放っておくよりも、ひとことの言葉を伝えたい

がんはこれだけ一般的な疾病になりましたが、発症原因が特定できないからか、または治癒の可能性が未知数なためか、「がんになった」と告げた瞬間、言葉を失う、もっと端的に言うと、言葉を発してはいけない、という表情になる人を多く見てきました。私はそういう態度に疎外感を感じるので、自分の病気を伝える相手は厳選してきました。

しかし、この人はお見舞いの本質を良く分かっているなと感心する事例もたくさんあります。それは、自分らしい言葉で励ましのひとことを贈れる人です。辛い経験をしているであろう人が目の前にいても、なんと声を掛ければよいのか分からず、掛ける言葉に自信が持てないのは、よくあることだと思います。その辛さを自分が経験していないのであれば、なおさらです。けれども、瞬時に反応して自分の心の声を届けてあげるべきなのです。きっと、自分ならこう感じるはず、という言葉が喉まで出掛かっているはずです。

「お辛かった(お辛い)でしょうね」
(私は経験していないので心底からあなたの気持ちになれないけれど、あなたはお辛いでしょうね)と共感を表現することが第一だと思います。
それ以上言葉の穂をつむげる方は、
「私にできることがあったらなんでも相談してね」、
「辛いとき何でもいいから声を掛けてね」
といった言葉を続けたりします。

これは入院中にお見舞いにうかがって伝えなくてはいけないわけではなく、患者があなたにがんである事実を告げてくれたときに掛ければよい言葉なのです。タイミングよりも、正しい答えよりも、大変ですね、分かりますよ、あなたの気持ちを受け止めていますよ、という反応をしてあげることで、打ち明けた側の心が軽くなるのです。

欧米企業で就労した経験が長く日本人以外との付き合いもある私が、がんに罹患したときに掛けてもらった言葉でとても印象的かつ、翻訳しても言い得て妙だなと思った言葉は、”I am always be with you”(いつもあなたと一緒にいるよ)や、”you are the strongest woman I ever met in my life”(君は僕が今まで会った中で一番強靭な女性だよ)です。後者は、大学院の途中でがん手術とホルモン治療のために学期途中で休み、復帰した授業で同窓生に言われた言葉です。まだ治るかどうかも分からない段階で、「君ならきっと大丈夫」と励ましてくれた珠玉のお見舞いの言葉です。

口ベタなら代弁してくれる素敵な作品を贈る

その方が入院、または自宅療養などされていれば、自分が感銘を受けた書籍(その他、動画でも音楽でも絵画でも)を贈るのも温かい思いやりだと感じます。私の10年を超える闘病の折々で様々な書籍や画集を贈ってくれる友人がいます。私は、感じ取ったパワーや感動をシェアしてくれる友人に恵まれています。入院や治療の区切りごとにそれぞれの友人が感動した本を貸してもらうと、自分ひとりで何人分もの体験と感動を得ることができ、人生得したような気持ちになります。そこで出会った感動の書籍を、私もまた知人のがん患者にお勧めするのです。

2014年師走の入院の際に、いただいた、あるいは借りた書籍の中で、他の方にも紹介したり差し上げたりした本をご紹介します。

こうした精神に訴えかけるような書籍だけではなく、ほっと心を温かくするような小説にも沢山の癒しをもらいました。

書籍をプレゼントする際は、ご本人にどんなものが欲しいか聞いてみるのもよいかもしれません。先輩の女性患者の方には「病のことより美味しいもののことを考えて元気になりたい」と言われて、お菓子のレシピとその由来を書いている本(消化器疾患で物を食べられないので、お菓子は写真ではなくイラストのものにしました)ですとか、関西のおばんざいのレシピ本などを差し上げました。

病との闘いは孤独なのです。それは人間が一人で生まれ落ち、死んでゆくことと同じように捉えられますが、辛い体験をしている人に「お辛いでしょうね」と共感を示すことから、社会生活の良さである支えあいが始まるのだと思います。

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