第2回 がん患者支援センターに聞きました。 免疫療法を主治医は認める?
厚労省の取り組みで、がん診療連携拠点病院等を指定しがん患者に様々な利点を提供できる仕組みがあります。
がん診療連携拠点病院等
私が通う大学病院にも「がん相談支援センター」があります。しかし、私は今まで仕事中心で生活しており多忙であったため、こうしたセンターに足を向けたことがなく今日は初めて相談にいきました。
相談したいことは2つありました。ひとつは、友人(元勤務先での部下)からがんの可能性が高く、細胞診の結果待ちのうちに治療までの心の準備をしたく、病院選びなど相談にのってほしいといわれたため、そうした患者の病院選択の際に気をつけることを聞きました。
もうひとつは、前述の友人にも参考になるだろうと想い、標準治療をしている患者さんが、主治医に免疫療法も実施したいと相談する場合、気をつけたほうがよい点や理解を得やすい話し方について聞きました。今回は、後者の「免疫療法を受けたいと主治医に相談するには」の部分について、お話します。
担当してくださったのは、相談員でありソーシャルワーカーのYさんで、穏やかに質問を促してくれました。
- 「私自身はがん歴も10年と長く、病院もずっとこちらの大学付属病院なので、医師たちとの情報交換にも長けており、免疫療法をしたいという話をした際も、ああそうですか、で終わりました。しかし、一般的に、標準治療をしている病院で、別の医療機関で免疫療法をしたいと考えていると話す際に、注意すべきポイント、またはだめだと断られる理由を教えてください。」
- 「まず、標準治療の抗ガン剤が始まってすぐの場合は、主治医は免疫療法を避けるように言うでしょう。多くの患者さんに副作用がつきものの薬剤開始時は、効果と副作用の見極めが大切な時期なので、抗がん剤の副作用なのか、免疫療法からくる影響なのかを判定し難い症状などがでた場合に、抗がん剤を止めることになる可能性がでてしまいます。そうなると、患者さんの利益が損なわれることになります。既に現在の標準治療で1年なり2年なり安定している患者さんには、免疫療法を積極的には進めないまでも、ご自身の判断に任せると言うと思います。」
- 「今までに、既に標準治療はしているが重粒子線治療や免疫療法などの先進医療を追加しようか悩んでいる、というような相談を受けたことはありますか?」
- 「私はそうした相談は受けていません。一方、患者さんは、はじめて癌になったときや転移したときに、治療法を医師と相談することと平行して様々な情報収集をされます。そのため、患者さんの標準治療の方針が確定していない状況で、先進医療の受けられる病院や費用について質問を受けたことはあります。」
- 「私自身も過去はそうでした。がんに罹患したときと転移再発したときに一番エネルギーを割いて、がん治療を含む情報を収集し、あの治療じゃない、これでもない、と様々な人に相談していました。標準治療の抗がん剤決定後すぐは、他の治療は一旦棚上げしたほうがよい、言い換えれば、標準治療で様子を見るほうが、効果と副作用を正しく判断できるということですね。一方で、自分にあった新しい治療法を探す場合は、治療の安定期を狙うと良いのですね。受診のタイミングを図るために、情報収集の努力は怠らないことが大切ですね。」
本日は、ピンポイントの質問しか出来ませんでしたが、この会話からもヒントがあると思います。
がんの治療法を検討し、標準的な化学療法(抗がん剤治療)を初めて開始することになった場合は、その効果と副作用を正しく把握するために、他の治療を同時に受けない方がよいと判断される可能性があることが分かりました。もちろん、化学療法と免疫療法、またはその他の先進医療とを同時に実施することに理解を示し対応してくれる医療機関もあると思います。受ける可能性がある治療法はすべてまとめて相談し、主治医に把握していただくことが望ましいでしょう。
また、1年以上同じ治療薬で治療が継続できているけれども、より体に楽な治療、またはより自分らしい生活を叶える治療を検討している患者は、最新の治療情報を収集して、主治医に相談することが大切だと思います。がん治療は日々変化していきます。開発中の抗がん剤の治験が始まったり、新しい治療薬が承認されて標準治療に加えられたりすることがあります。自由診療の制度も変わってきています。科学技術と医療法制度の変化はめまぐるしいのです。
がんの治療法を探すにあたっては、近くのがん診療連携拠点病院等の「がん相談支援センター」を活用できます。相談は無料で、その病院の患者である必要はありません。ソーシャルワーカーや看護師など医療現場で患者が頼れる専門家達が相談に載ってくれます。
こちらは東京都内のがん診療連携拠点病院等の「がん相談支援センター」
自分ひとりで最新情報を捜す必要はありません。サポートしてくれる家族や知人、がん相談支援センターなどに頼りながら、がんと上手に付き合っていただきたいのです。
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