テラの樹状細胞ワクチン療法技術が目指すもの

高活性化

樹状細胞ワクチン療法の重要性は、ワクチンの投与でがんに対してどれだけ強い傷害活性を持つT細胞を誘導できるかだと考えられています。テラは2つの側面― より効率的に細胞傷害性T細胞を誘導するための抗原の選択、樹状細胞そのものの純度を高めることから、この課題の解決を目指しています。

樹状細胞ワクチン療法とは

より効率的な細胞傷害性T細胞の誘導を目指して、樹状細胞にがん抗原(ペプチド)を加えたものを樹状細胞ワクチンと呼んでいます。ペプチドワクチンと樹状細胞ワクチンは、両者ともにがん特異的な免疫療法で、がん抗原特異的な細胞傷害性T細胞を誘導してがんを攻撃することを目指す点は共通していますが、前者はがん抗原ペプチドを単独で、後者はがん抗原ペプチドが結合した状態の樹状細胞を投与する点が異なります。ペプチドワクチンでは、投与されたペプチドがまず体内の樹状細胞に取り込まれた後はじめて細胞傷害性T細胞が誘導されるのに対し、樹状細胞ワクチンではあらかじめペプチドを提示している樹状細胞を投与するので、直接細胞傷害性T細胞を誘導することも相違点となっています。

がんワクチンに適したペプチドとして注目されるWT1

がん抗原はこれまでにMAGEを皮切りに、HER2/neuやNY-ESO-1、WT1など多数が同定されており、臨床応用研究も進んでいます。これまでに同定された75種類のがん抗原を治療効果や免疫原性、特異性、発現レベルや抗原陽性患者数等の9項目で評価した米国国立衛生研究所(NIH)による検討では、WT1が高いスコアを示しました(1)。WT1は当初、小児腎がんのWilms腫瘍の原因遺伝子として同定されたがん抗原(2, 3)です。現在は膵臓、肺、大腸などの固形がんや白血病などの血液がんでも高発現することが確認されており(図1)、ワクチンに用いるペプチドとして非常に適していると考えられています。こうしたことから、テラでは、WT1を用いた樹状細胞ワクチンの開発、研究を行っています。

(1)Cheever MA, et al.: Clin Cancer Res 2009; 15: 5323-37.
(2)Call KM, et al.: Cell 1990; 60: 509-20.
(3)Gessler M, et al.: Nature 1990; 343: 774-8.

図1. 各がんにおけるWT1発現率

引用文献:Sugiyama H. Jpn Clin Oncol Vol. 40, Number 5 2010: 377-87.

患者ごとに異なるMHCの“溝”が個別化医療の鍵

近年の研究から、樹状細胞の抗原提示能は抗原ペプチドとMHC分子との結合力に比例すると考えられています。一方、ヒトMHC(HLA)の構造の解析も進み、現在は、細胞外ドメイン、細胞膜貫通領域、細胞内ドメインに分けられること、細胞外ドメインにはα1から3のドメインとβ2ミクログロブリンからなるα鎖があることが確認されています。さらに、がん抗原などのペプチドは、α1とα2の間の溝に収納されることも明らかとなりました(図2)。ヒトMHC(HLA)は患者によって型が異なり、溝の形も違うことから、ペプチドとMHC分子との結合力を高めるには、溝の形に合う最適化されたペプチドが必要であり、個別化医療の鍵となります。テラでは、このような最適化されたペプチドの実用化に向けて、研究と開発に力を注いでいます。

図2. MHCクラスIの構造

安全、安定供給に向けた取り組み

樹状細胞の成熟度

樹状細胞は、単球から分化、誘導されますが、一律に成熟化するわけではありません。樹状細胞の成熟度や純度のマーカーとしては、細胞表面に発現しているMHCクラスI、II分子やCD11c、CD14、CD83、CD86、CD80等が用いられています(図3)。近年の報告では、CD86、HLA-DRが発現している割合が70%以上であれば樹状細胞ワクチンとして適しているとされており(4)、テラでは、東京大学医科学研究所の培養技術を元に改良を重ね、この基準を満たす培養技術を確立しています。

(4) Butterfield LH, et al.: Clin Cancer Res 2011; 17: 3064-76.

図3. 樹状細胞の成熟度マーカーと純度

引用:社内データ

品質管理された作業工程

樹状細胞ワクチンは、医療機関の細胞加工施設(Cell Processing Center:CPC)と呼ばれる、清浄度等の品質が管理された施設で作製されます。CPCでの作業は標準業務手順書(Standard Operating Procedure:SOP)に従って、訓練を積んだ培養担当者により厳格に行われ、品質が管理されています。

現在も、細胞医療、再生医療分野は驚異的な速度で発展を続けています。転換期を迎えているこの分野の一翼を担うべく、テラは今後も着実に歩みを進めていきたいと考えています。

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