プレスリリース

2014.05.12 樹状細胞ワクチン「バクセル®」の臨床成績、「Cancer Immunology, Immunotherapy」にて発表~切除不能な進行膵がんに対する樹状細胞ワクチン「バクセル®」の有用性を確認~

テラ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:矢﨑 雄一郎、以下「テラ」)が提供する独自技術である樹状細胞ワクチン「バクセル®(Vaccell)」※1について、切除不能な局所進行膵がんに対する「バクセル®」の有用性と予後因子の検討に関する論文が、がんの免疫分野における専門学術誌である「Cancer Immunology, Immunotherapy(CII)」電子版(Cancer Immunology, Immunotherapy. 29 April 2014)に掲載されました※2。

膵がんは難治性がんの一つで、極めて予後不良な疾患です。外科的切除は膵がんにおいて治癒する可能性がある唯一の方法ですが、手術が受けられる膵がん患者は全体のわずか5%から25%と限られています。また、切除不能な進行膵がんでは、抗がん剤治療等が標準治療として位置付けられています。塩酸ゲムシタビンとS-1※3が主な選択肢であり、日本及び台湾で実施された第III相臨床試験においてこれら2つの抗がん剤を使用した際の生存期間中央値(Median Survival Time、以下「MST」)は、10.1ヶ月と報告されています※4。最近ではFOLFIRINOX療法※5が承認され塩酸ゲムシタビンより生存期間を有意に延長することが明らかにされておりますが、比較的副作用が強いことから、特定のがん専門病院での慎重な実施に限定されています。このように、切除不能な膵がんには有効な治療選択肢が少ないため、副作用が少ない新たな治療法が求められています。

今回の研究は、切除不能な進行膵がんに対して、抗がん剤治療にWT1ペプチド※6及びMUC1(がん抗原)を用いた樹状細胞ワクチン「バクセル®」の有用性と安全性を多施設で検証し、生存期間延長に関係する因子の特定を目的として、信州大学医学部附属病院(本治療を先進医療として実施中)、長崎大学病院、札幌北楡病院、並びにテラの契約医療機関である医療法人社団医創会 セレンクリニックグループ(東京・名古屋・神戸・福岡)における膵がん255症例を後向き※7に解析した結果が報告されています。全例に抗がん剤投与が併用され、さらに前化学療法を受けた後に樹状細胞ワクチンが併用されている症例が約95%(当初からの化学療法と併用:5%)と、比較的均一な患者集団における解析となっています。
255症例における、膵がんと診断された日と樹状細胞ワクチンの初回投与からのMSTは、それぞれ16.5ヶ月と9.9ヶ月でした。生存期間への関与因子をCox比例ハザードモデル※8により多変量解析※9したところ、樹状細胞ワクチン投与部位の発赤反応陽性(直径3cm以上と定義)が、生存期間延長に関与する独立因子でした。加えて、ピアソンのカイ二乗検定※10から、この樹状細胞ワクチン投与部位の発赤反応は、 (1)樹状細胞ワクチン投与後の発熱、(2)樹状細胞ワクチン投与前のアルブミン値(≧3.5g/dL)、(3)PNI(Prognostic Nutritional Index)※11(≧40)等が従属因子であるという結果が得られました。これらは、良好な栄養状態を維持すること等が重要であることを示唆しています。

さらに今回の解析で最も重要な所見は、いわゆるワクチン投与部位の発赤反応陽性症例のカプランマイヤーカーブ(生存曲線)が、ワクチン開始後約10ヶ月頃から生存が延びてくるという特徴的な「delayed separation pattern」を示したことです。この生存曲線における「delayed separation pattern」は米国の食品医薬品局(FDA)発行のドラフトガイドライン「Guidance for Industry- Clinical Considerations for Therapeutic Cancer Vaccines(2011年10月発行)」において、がんワクチンが有効性を示す際の典型的なパターンであるとされており、少なくともこの患者集団においてはワクチンが明確な効果を示していることが示唆されます。

今回の研究は、WT1ペプチド及びMUC1を用いた樹状細胞ワクチン「バクセル®」が安全に施行でき、切除不能な進行膵がんの患者の全生存期間の延長に寄与する可能性があることを報告しています。今回の研究により明らかとなった生存期間延長に関与する因子は、テラの成長戦略の柱の一つである樹状細胞ワクチン「バクセル®」の薬事承認取得に向けた取り組みにおける重要なデータであると言えます。
テラは、今後も樹状細胞ワクチン「バクセル®」の更なるエビデンス(科学的根拠)の強化を図り、より良い細胞医療の開発・普及に取り組んでまいります。


【※1】樹状細胞ワクチン「バクセル®」
本来、血液中に数少ない樹状細胞(体内に侵入した異物を攻撃する役割を持つリンパ球に対して、攻撃指令を与える司令塔のような細胞)を体外で大量に培養し、患者のがん組織や人工的に作製したがんの目印である物質(がん抗原)の特徴を認識させて体内に戻すことで、樹状細胞からリンパ球にがんの特徴を伝達し、そのリンパ球にがん細胞のみを狙って攻撃させる新しいがん免疫療法です。

【※2】論文について
Prognostic factors related to add-on dendritic cell vaccines on patients with inoperable pancreatic cancer receiving chemotherapy: a multicenter analysis. : M. Kobayashi et al.

【※3】塩酸ゲムシタビンとS-1
膵がんに対する治療薬として保険適用されている抗がん剤です。作用機序としては、DNA合成を阻害することで細胞死を誘発します。

【※4】論文について
Randomized phase III study of gemcitabine plus S-1, S-1 alone, or gemcitabine alone in patients with locally advanced and metastatic pancreatic cancer in Japan and Taiwan: GEST study. J Clin Oncol. 2013; 31: 1640-8.

【※5】FOLFIRINOX療法
治癒切除不能な膵がんを対象とした、オキサリプラチン、イリノテカン塩酸塩水和物、フルオロウラシル、レボホリナートカルシウムによる併用療法で、2013年12月に承認されています。

【※6】WT1ペプチド
WT1とは大阪大学大学院杉山治夫教授等によって、ほぼ全てのがんに発現していることが報告されている世界的に有名ながんの目印です。WT1は2009年にアメリカの学会誌において、がん治療に用いる優先度が最も高いがんの目印として、1位に選出されました。テラは、効果が期待できると証明されたWT1の一部をさらに改変することにより、より強力ながん免疫を誘導することが可能である杉山治夫教授が開発したWT1ペプチドの独占実施権を保有しており、このWT1ペプチドを用いた樹状細胞ワクチン「バクセル®」のエビデンス(科学的根拠)の強化を図っています。

【※7】後ろ向きに解析
過去に溯って臨床結果を調べて解析する方法です。なお、臨床研究開始後から実施した臨床結果を評価する方法は前向き臨床研究と呼ばれます。

【※8】Cox比例ハザードモデル
生存期間を分析する統計学的手法の一つ。

【※9】多変量解析
複数の値からなるデータ(多変量データ)をもとにして、データ間の相互関連を分析する統計学的手法の総称。

【※10】ピアソンのカイ二乗検定
独立性の検定等に用いられる統計学的手法の一つ。

【※11】PNI(Prognostic Nutritional Index)
予後栄養指数のことで、術後の予後に対する危険度の目安として用いられる指数です。

樹状細胞ワクチン「バクセルR」の臨床成績、「Cancer Immunology, Immunotherapy」にて発表

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