リリース
第68回日本癌学会学術集会参加のご報告
テラ株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:矢﨑 雄一郎)取締役CSOの岡本正人(武蔵野大学薬物療法学研究室客員教授)、研究開発部長の遊佐精一(武蔵野大学薬物療法学研究室客員研究員)、研究開発部の塚田旬、嶋村香苗(両名とも、武蔵野大学薬物療法学研究室客員研究員)が、「第68回日本癌学会学術総会」(会長:国立がんセンター 廣橋説雄、2009年10月1日(木)~3日(土)、パシフィコ横浜)において、以下の通り研究成果の報告を行いました。
日本癌学会は、癌研究の発達を目的に1941年に設立された学会です。年に1度学術総会が開催されており、当社としましては、昨年に続いての学会報告となります。
日本癌学会 http://www.jca.gr.jp/index.html
進行膵癌に対するgemcitabine/S-1併用樹状細胞ワクチン療法
岡本正人1,2,3、遊佐精一1,2、塚田旬1,2、嶋村香苗1,2、友田岳志3
(1武蔵野大学薬学療法学、2テラ株式会社、3セレンクリニック)
膵癌は極めて予後不良である。本研究では、標準治療無効の進行膵癌の症例に対して、化学療法のゲムシタビンおよびS-1と膵癌関連癌抗原由来ペプチドをパルスした樹状細胞ワクチンとの併用の臨床効果について検討したので報告する。標準治療に対して抵抗性を示す手術切除不能の膵癌患者18名を対象とした。成熟樹状細胞は血液の成分採血後、CD14陽性の単球をGM-CSFとIL- 4で6日間培養し、溶連菌の乾燥菌対であるOK-432で刺激することで得られた後、膵癌関連抗原由来ペプチドをパルスされた。得られた樹状細胞ワクチン(1x107)は、ゲムシタビンおよびS-1と共に5回、14日間のインターバルをおいて皮内投与された。評価可能な18症例のうちCR2例(11.1%)、PR7例(38.9%)、SD5例(27.8%)、PD4例(22.2%)が認められた(CR:完全退縮;PR:部分退縮;SD:進行停止;PD:進行)。奏功率は50.0%であった。本治療において、NCI-CTC Grade3以上の重篤な副作用は認められなかった。標準治療の適応にならない手術切除不能の膵癌の症例に対して、腫瘍抗原ペプチドをパルスした樹状細胞ワクチン療法とゲムシタビンおよびS-1の化学療法との併用療法は安全であり、抗腫瘍効果が得られる可能性が強く示唆された。
OK-432によるTh1誘導における5-FUおよび放射線の影響
遊佐精一1,2、塚田旬1,2、嶋村香苗1,2、岡本正人1,2
(1テラ株式会社、2武蔵野大学薬物療法学)
我々はこれまでOK-432と5-FUあるいは放射線との併用療法が頭頸部癌に対して著しい臨床効果を示したことを報告してきた。T細胞の免疫応答をTh1タイプに傾ける事が抗腫瘍免疫には重要である一方、CD4陽性T細胞がTh2タイプや制御性T細胞に分化すると、IL-10やTGFbを産生し抗腫瘍効果にネガティブに働くこともある。本研究で、我々は、OK-432によって誘導されるサイトカイン産生に与える5-FUや放射線の影響を検討した。OK-432は末梢血単核球を刺激し、IFNg、TNFa、IL-12、IL-18等のTh1サイトカインだけでなく、IL-10やTGFb等のTh2サイトカイン産生を誘導した。末梢血単核球が5-FUや放射線存在下においてOK-432で刺激されるとTh1タイプのサイトカインではなくIL-10やTGFbの産生が有意に阻害された。さらに、OK-432は、T-bet、GATA-3、Foxp3、SOCS-1、そしてSOCS-3の発現を促進するが、T-bet以外の遺伝子の発現は、5-FUや放射線によって減少した。よって、放射線や5-FUは、IL-10やTGFbの産生に必要なSOCS-1、SOCS-3、GATA-3、及びFoxp3の遺伝子発現を抑制することによってその産生を阻害し、Th1優位な免疫応答を誘導していることが示唆された。
OK432刺激によって成熟した腫瘍ライセートDCを用いた抗腫瘍効果の判定
塚田旬1,2、遊佐精一1,2、嶋村香苗1,2、岡本正人1,2,3
(1武蔵野大学薬物療法学、2テラ株式会社、3セレンクリニック)
【背景と目的】効果的な樹状細胞療法の確立には、樹状細胞の品質が考慮されなくてはならない。本研究は、OK-432を利用したライセートパルス樹状細胞ワクチン療法を確立し、B16マウスメラノーマを用いたマウスモデルで検討することを目的とした。
【結果】マウス樹状細胞はGM-CSFを用いて骨髄より調製された。成熟樹状細胞は、B16細胞あるいはTpit/E血管内皮様細胞由来ライセートでパルスされOK-432で刺激することで得られ、B16皮下腫瘍モデルマウスに投与された。投与された樹状細胞の表現型は成熟樹状細胞を示しており、IL-12を多量に分泌していた。本研究により得られた樹状細胞はB16皮下モデルマウスの腫瘍の成長を効率的に阻害した。
【考察】我々は、Th1タイプサイトカインを産生する成熟樹状細胞の培養法を確立した。Tpit/E細胞由来ライセートもまた効果的にB16腫瘍増殖を抑制したことから、腫瘍血管が標的になった可能性が示唆された。現在、我々はTpit/E細胞ライセートパルスされた樹状細胞や何もパルスしていない樹状細胞がB16メラノーマ細胞の増殖を阻害した正確な分子メカニズムの解明を検討中である。
転移を有する進行癌患者に対するピンポイント放射線照射と局所樹状細胞療法の併用
嶋村香苗1,2、岡本正人1,2,3、遊佐精一1,2、塚田旬1,2、友田岳志3
(1武蔵野大学薬物療法学、2テラ株式会社、3セレンクリニック)
【背景と目的】樹状細胞は最も強力な抗原提示細胞(APC)であり免疫反応において中心的な役割を果たしている。未熟な樹状細胞は強力な貪食能を有し、アポトーシスを起こした癌細胞を貪食する。これが適切に成熟すると、T細胞に抗原提示し、細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導し、抗腫瘍効果を発現する。今回我々は、IMRT(強度変調放射線治療)あるいはSRT(定位放射線治療)という、いわゆるピンポイント照射にて、癌細胞のアポトーシスを誘導した後、樹状細胞を腫瘍局所に投与するという治療法の抗腫瘍効果について、レトロスペクティブに検討した。
【患者と方法】樹状細胞はアフェレーシスで回収したCD14+単球をGM-CSFとIL-4を用いて6日間培養し、誘導した。20人の転移を有する進行癌患者を対象とし、ピンポイント照射によって癌細胞にアポトーシスを起こさせた後に、樹状細胞(3×107)を2週間毎に4回局所に投与した。
【結果】照射+樹状細胞局注を行った部位は20人中8人(40.0%)がCR、10人(50.0%)がPRという結果になった。また、照射、局注をしていない転移巣においても、2人(10.0%)がCR、7人(35.0%)がPR、9人(45%)がmixed responseという反応が認められた。
【結論】ピンポイント放射線照射と局所樹状細胞ワクチン療法の併用は標準治療無効の難治性の進行癌に対して有用な治療法となる可能性が強く示唆された。



